先日院内にてロイヤルカナン主催のセミナーpart7が開催されました。
今回は腎臓疾患に対する食事管理について以下にまとめます。
腎臓疾患に対する食事管理
●腎臓とは
・尿をつくる
体にとっていらないものを捨てるろ過機能と体の水分を調整する濃縮機能(再吸収)がある。
例)10㎏の犬の場合…一日に53.3Lの尿をろ過する。しかし、ろ過された尿から体にとって必要な水分や塩分、栄養素などを
再吸収している(約53.1L)。結局尿として排出されるのは02.~0.25L
・その他
血液を作る・血圧の調整・血中のカルシウム量の調整
ネフロン
ネフロンとは尿排泄系の最小単位でボーマン嚢(内部に毛細血管のループからなる糸球体を含む)と尿細管からなる。
糸球体とボーマン嚢を合わせて腎小体という。
ネフロンは二種類に分けられる。
1.尿細管の短いもの(皮質ネフロン)
2.尿細管の長いもの(傍髄質ネフロン)
犬は皮質ネフロンが60%傍髄質ネフロンが40%でろ過機能が得意。
そのため腎疾患に陥った場合身体の老廃物が捨てれなくなり(尿が作られなくなる)予後不良の事もある。
逆に猫は皮質ネフロンが0%傍髄質ネフロンが100%で吸収機能が得意である。
因みに人は皮質ネフロンが80%傍髄質ネフロンが20%である。
●慢性腎臓病はどういう病気?
慢性に経過し不可逆的に進行する腎臓機能障害。壊れたところは治らない。
ネフロンの50%が損傷を受けると、傷ついた部分は新しく形成されないため残ったネフロンが200%の仕事を補うことになる。
(ろ過率の亢進→糸球体硬化)
・IRISの分類 ステージⅠ
残りのネフロンの割合~33%(100%中)
・尿検査、エコー検査…うすい尿(多尿・多飲・脱水・便秘)・異常像が見つかることがある。
・血液検査…異常なし
尿中には微量のタンパクが出ることもある。
・IRISの分類 ステージⅡ
残りのネフロンの割合33~25%
・臨床症状はない、またはごくわずか(尿が増えた…と思うくらい)
・血液検査…クレアチニン1.4~2.0(犬)、1.6~2.8(猫)
・IRISの分類 ステージⅢ
残りのネフロンの割合25~10%
・様々な臨床症状(貧血・代謝性アシドーシスなど)
・血液検査…クレアチニン2.1~5.0(犬)、2.9~5.0(猫)
・IRISの分類 ステージⅣ
残りのネフロンの割合25~10%(10%以下)
・尿毒症
・血液検査…クレアチニン>5.0(犬猫)
(血液検査)
ステージ 1 2 3 4
クレアチニン 犬 <1.4 1.4~2.0 2.1~5.0 >5.0
(mg/dl) 猫 <1.6 1.6~2.8 2.9~5.0 >5.0
非高窒素血症 軽度の腎性 中程度の腎性 重度の腎性
高窒素血症 高窒素血症 高窒素血症
小型犬の場合クレアチニンが基準値以内(1.0位)でも糸球体ろ過量が低下している場合があるため注意が必要。
・治療
病気は徐々に進行し、病気そのものが改善することはない。
○保存療法(病気の進行を遅らせる)
食事療法・内科療法・輸液療法など
○対象療法(症状を軽減する)
輸液療法・食事療法・内科療法など
・食事療法の目的
1.残存ネフロンの保存(残り33~25%)
→進行を遅らせる
2.尿毒症症状の軽減(残り25~0%)
→症状を抑える
●食事管理のポイント(充分なカロリー摂取も重要)
腎臓がかなり悪くなってから食事療法食に変更しようとしてもすでに食欲が落ちている…
慢性腎臓病が進んでからの食事療法は難しい。
◎病気の進行を遅らせる
・リンの制限+リン吸着剤(リンの制限が生存期間をのばす一つの方法)
・タンパク質の制限
・EPA・DHA(血管拡張作用があり、糸球体ろ過が上昇)
・抗酸化物質
◎症状を抑える
・タンパク質の制限
・代謝性アシドーシスの補正
・サイリウム
!食事中のリンの制限
リンはタンパク質に多く含まれているためタンパク資源を厳選し、量を調節。
腸管リン吸着剤…炭酸カルシウムなどを用いて排出させる。
!食事性タンパク質の制限
腎性のタンパク尿を認める場合
→タンパク尿は腎障害の進行の要因の一つ・腎臓病が進行すると食欲不振となり食事の変更が困難。
腎性のタンパク尿が診断されたら初期からタンパク質を制限。
また、抗酸化物質(ビタミンE・ビタミンC・ルテイン・タウリン・ポリフェノール)は慢性腎臓病の進行を遅らせる。
◎代謝性アシドーシスの補正
腎機能が低下するとNH₄⁺の排泄減少→H⁺の排泄減少
HCO₃⁻の再吸収低下
→代謝性アシドーシス
アルカリ化する成分としてクエン酸カルシウム 炭酸カルシウムが有効
◎サイリウム(インドオオバコ種子外皮由来の植物性繊維)
→自然由来の粘滑剤、水分を吸収してゲルを形成し元の量の10倍まで膨張する。
慢性腎臓病では複合的な原因から便秘が生じるのでこのような食物繊維が含まれている食事が適している。
◎充分なカロリー摂取
慢性腎臓病では正常よりも要求カロリーが増加。
エネルギー摂取不足で蛋白質の利用効率が低下→エネルギー要求量を満たしていればこの変化はない
低BCSスコアの慢性腎臓病の犬では生存期間が短い
→高カロリーの食事、食べることがなにより大事
給与時の注意
1.毎日食事を3~4回に分けて与える→消化吸収率を最大にする
2.38~39℃に温めて与えるとより嗜好性が高まる→香り、風味アップ
・おすすめフード
犬…腎臓サポート(セレクション)(ドライ・缶・パウチがある)
エイジングケア(中高齢の子から腎臓のケアを考えている方におすすめ)
猫…腎臓サポート(スペシャル・セレクション)(ドライ・パウチがある)
エイジングケア ステージⅠ(ライト)(中高齢の子から腎臓のケアを考えている方におすすめ)
エイジングケア ステージⅡ(ライト)
●健康診断
簡単な検査をこまめに行うことで病気の早期発見につながるケースも…
◎聴診→心雑音の有無→心臓病
◎尿検査→尿比重(低比重尿)・尿タンパク→LUTD、初期の腎臓病
ビリルビン→肝疾患
潜血・尿pH(亜硝酸塩:細菌感染)→LUTD、腎疾患
尿糖→糖尿病、腎疾患
AHT:塚田