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ロイヤルカナン 院内セミナー part6

 

先日院内にてロイヤルカナン主催のセミナーpart6が開催されました。

今回は心臓疾患に対する食事管理について以下にまとめます。

 

心臓疾患に対する療法食

 

●心臓病の症例は多い?

 ・すべての犬の10~15%(10歳以上の犬の30%以上)

 ・犬の死因の第二位

 ・95%が後天的心臓病

  現在犬も高齢化社会に突入し心臓病の症例も多くなっている。

 

●心臓病はどういう病気?

  心臓は全身に血液を送るポンプの働きをしており、全身に酸素と栄養を供給し一生働き続ける。

   

 ・慢性弁膜疾患(CVD):犬で最も多く認められる心疾患

  僧帽弁閉鎖不全が一番多い(日本)左心室から左心房への血液の逆流を防ぐ僧帽弁が機能しなくなったために逆流が起きる。

 

  原因…遺伝、高齢、フィラリア症、細菌感染など(歯肉炎から発展する可能性もある)

  好発犬種(主に小型犬)…キャバリア、マルチーズ、ミニチュア・ピンシャー、パピヨン、ミニチュア・シュナウザー、

              ポメラニアン、プードル(トイ、ミニチュア)、テリア種、ダックスフント、チワワ、

              コッカースパニエル、シー・ズーなど。日本では、65%が10㎏以下

              肥満である犬が多く、5歳以下で発症はまれ。(しかしキャバリアは除く)

 

  心臓が病気になるとポンプとしての機能が低下してしまう。

  様々な心臓病で類似した反応がある(代償反応・神経内分泌活性による)。

 ・共通した病歴所見むかつき息切れor呼吸困難眠れない、気絶or痙攣、体重減少、腹部膨満、虚弱

 ・共通した身体検査所見心雑音呼吸困難不整脈、頚静脈怒張、チアノーゼ、腹水、CRT延長、腹部臓器腫大

 

 ・ISACHCの心機能分類

  Ⅰ期…心疾患の所見あるが臨床徴候を示さない(家ではわからない)

     a→心拡大がみられない

     b→心拡大がみられる

  Ⅱ期…臨床徴候が軽度の運動でみられる。運動不耐性、発咳、軽度の呼吸困難など。

  Ⅲ期…臨床徴候が明らかにみられる。安静時でも呼吸困難、浮腫や重度の胸水腹水貯留、重度の運動不耐性。

     a→自宅での治療が可能

     b→入院が推奨される

  ・ACVIM consensus recommendations on canine CHF

     ステージA…慢性弁膜疾患罹患リスクが高いが現状心疾患がない

     ステージB1…器質的心疾患は存在する。無症状で左心拡大などのリモデリングも認められない。

     ステージB2…器質的心疾患は存在する。無症状だが、左心拡大などのリモデリングが認められる。

     ステージC…うっ血性心不全の臨床症状を現在あるいは過去に呈している。

           治療により臨床症状が消失してもステージBに戻ることはない。

     ステージD…標準的治療に反応しない末期の心不全段階。

 

   悪化要因として肥満、妊娠、暑さ、呼吸器の感染、出血・貧血、過度の運動があげられる。

 

   昔の食事管理…

  〈進行したステージの対症療法〉※利尿剤との併用が前提

   ・厳しいナトリウムの制限:体液貯留の緩和

   ・タンパク質の制限:肝臓・腎臓への代謝負荷の軽減。見えている症状を抑えることが目的

 

   今の食事管理…

   早期の段階から対応。症状が出るまでの期間を延ばす目的。

 

●悪液質とは…

 何らかの疾患を原因とする栄養失調により衰弱した状態。

 体重減少、筋肉組織の消耗および食欲不振からなる症候群。脂肪の下で筋肉がおちていくのでわかりにくい。

   

・食欲不振と体重減少

 心臓病の犬では一般的にみられる。

・症状からくる疲労と呼吸困難

・おいしくない食事…などの理由から

     ↓

 食欲不振=カロリー不足

     ↓

 筋肉が落ちて栄養不良となる=悪液質

 

・心悪液質

 心悪液質による体重減少が心臓病を進行させて生存期間を短くする

 →適切な食事管理で体重減少を避けることが重要。

 

・心悪液質に対する食事療法

 ①食欲不振に対する栄養サポート

 →高カロリー密度の食事、高い嗜好性の食事

 

 ②サイトカイン(TNF・IL-1)の生産を抑える

 →EPA・DHAの補給(n-3脂肪酸含有量の高い魚油の補給はうっ血性心不全の犬におけるサイトカイン産生を抑える)

          (IL-1減少はうっ血性心不全の犬の生存期間と相関している)

 

 ③循環不全の改善

 →アルギニンの補給

  アルギニンは一酸化窒素の前駆物質であり、血管平滑筋に対する弛緩因子として確認されている。

  摂取することで高血圧を間接的に緩和することができる。

 

●ナトリウムについて

 ステージに応じたナトリウム制限が必要

 ・心臓病初期(ACE阻害薬のみ)…軽度〜中程度のナトリウム制限(過剰なナトリウム摂取を避ける)

 ・重度のうっ血性心不全(利尿剤も使用)…ナトリウム制限

                    (*ナトリウム制限については様々な見解があり、獣医師と相談が必要。)

 

 例)ISACHCの心機能分類(食事性ナトリウム推奨量)(400㎉)

   Ⅰ期…a <400mg

      b 200~320mg

   Ⅱ期…  200~320mg

   Ⅲ期…a,b  <200mg

                    

  食品中のナトリウム(400㎉)

  ロースハム2040mg(204gあたり)・プロセスチーズ1298mg(118g)・じゃこ5648mg(353g)・

  ビーフジャーキー2413mg(127g)・鶏肉(ささみ)140mg(350g)・まぐろ(赤身)156mg(320g)

  関節サポート210mg・心臓サポート1+関節サポート210mg・心臓サポート1缶220mg・

  心臓サポート2 100mg・心臓サポート2缶160mg

 

●タンパク質について

 成犬の維持要求量を満たす良質なタンパクを摂取すべき

     

 !食事管理のポイント

  ・高いエネルギー密度…食欲不振の改善、悪液質の回避

  ・高い嗜好性…食欲不振の改善、悪液質の回避

  ・EPA・DHAサイトカイン産生の抑制、食欲不振の防止

  ・L-アルギニン…循環不良の改善

  ・抗酸化物質…酸化ストレスの除去

  ・L-カルニチン…拡張性心筋症に有効

  ・タウリン…拡張心筋症に有効

  ・マグネシウム…欠乏の回避

  ・タンパク質摂取悪液質の回避、栄養失調の回避

  ・ステージに応じたナトリウム制限…臨床症状の軽減、必要な薬剤の種類を最小限にする

 

●心臓病での食事管理

  ・心臓サポート1+関節サポート

  ・心臓をサポート(初期)

  EPA・DHAの増強:悪液質の回避

  Naの調節:初期の心臓病に対応

  アルギニン:循環不全を考慮

  ・関節をサポート

  緑イ貝を配合、コンドロイチン硫酸、グルコサミンを強化

  ・腎臓をサポート

   リンの制限:初期の慢性腎臓病に対応

  ・肝臓をサポート(高アンモニア血症は除く)、肝疾患で使用したい場合は初期から適応。

   亜鉛、抗酸化物質(タウリン、ビタミンE、ビタミンC)

   他にもシニア期の健康を栄養学的にサポートしています。中高齢犬の健康維持のための食事としても最適。

 

  ・心臓サポート2

   利尿剤を必要とするステージ(Ⅲ~Ⅳ期)の心臓病、初期の慢性腎臓病を併発した症例も使用可能。

   Naを制限しL-カルニチンを増強。

 

  ・ベッツプランエイジングケア

   老齢性変化にともなう機能低下のリスクを考慮。高齢犬の日々の健康管理の食事としても最適。歯石にも対応。

  ・活力と能の健康に配慮

  -複数の抗活性酸素物質を配合

  -ナトリウムリンなどの含有量を調整

  -脳の健康維持に必要な栄養素を配合

  ・老化と共に減少する筋肉量を考慮

  -分岐鎖アミノ酸を増強

  ・健康な皮膚のバリア機能維持に配慮

  -パントデン酸、イノシトール、ナイアシン、コリン、ヒスチジンを配合

  -EPA・DHA、ɤリノレン酸を配合

  ・歯と歯茎の健康に配慮   

  -粒の形状

  -ポリリン酸ナトリウム

                

                                                AHT:塚田