先日、院内にてロイヤルカナン主催のセミナーpart5が開催されました。
今回は肥満に対する食事管理について以下にまとめます。
●なぜ肥るのか?
食事の与えすぎと運動不足が原因に挙げられます。
飼い主さんが不必要にあげすぎてしまうことが原因の一つです。
おやつは特にフードより嗜好性が高いため味を覚えるとフードを食べなくなってしまうこともあります。
・一日のカロリー必要量(あくまで参考値です)
成人男性:2500㎉
成人女性:2000㎉
30㎏の犬:1400㎉
10㎏の犬:600㎉
5㎏の犬:350㎉
2㎏の犬:180㎉
例)コップ一杯の牛乳:約141㎉、ジャーキー一本:約10~20kcal
ちなみに…ポテトチップス100gは554㎉あり消費するにはクロール30分または縄跳び40分、
アーモンドチョコ6個は146㎉あり消費するには階段上り下りを25分~30分必要となります!
!おやつは一日の必要なエネルギーの20%以内が限度。おやつを上げた分フードを減らすようにする。
●肥満の定義
・様々な身体機能に変化をもたらす過剰な脂肪沈着を特徴とする病的な状態
・健康に有害な結果をもたらす過剰な脂肪
・最適な体重よりも15%過剰な犬、20%過剰な猫
例)適正体重が4kgの犬が4.6kgになると肥満です。適正体重が4kgの猫が4.8kgになると肥満です。
最適な体重の目安は避妊・去勢手術前の1歳くらいがベスト。
肥満のリスクとして寿命への影響や循環器の障害、間接・運動器官の障害が挙げられます。
猫では、糖尿病や関節疾患が多く目立ち運動しないことにより水分の摂取が減り尿量が少なくなるため
尿石症のリスクも高くなります。
・QOL(生活の質)の低下、寿命の短縮、様々な疾患の素因につながります。
犬・猫の肥満自体が病気であると考え、日々気を付けて食事管理や運動を行うようにしましょう。
●ボディコンディションスコア(1~9段階で体型を判定する)
1~3は痩せすぎ~痩せ気味・4~5は標準・6は太り気味・7~9は太っている~太りすぎ
1→遠距離からでも肋骨、腰椎、骨盤および全ての骨ばった隆起がはっきりと見える。
体脂肪が全く認められない。明らかな筋肉量低下。
2→肋骨、腰椎および骨盤を容易に見ることができる。体脂肪が触知できない。
その他に骨ばった隆起が見える。筋肉量の低下はごくわずか。
3→肋骨は容易に触知でき、体脂肪が触知できず肋骨が見える場合もある。
腰椎の上部が見える。骨盤が骨ばって見える。腰がくっきりとくびれて見える。
4→わずかな体脂肪が肋骨を覆っており、肋骨亜容易に触知できる。
上から見たときにくびれが容易に認められる。腹部ひだがはっきりと見える。
5→肋骨を覆う余計な体脂肪はなく、肋骨に容易に触知できる。
上から見たときに肋骨の後ろに腰のくびれが見える。横から見たときに腹部が引き締まっている。
6→肋骨はわずかな過剰脂肪に覆われ触知できる。上から見ると腰のくびれが見えるがあまりはっきりしていない。
腹部ひだがはっきりとしている。
7→肋骨の触知は困難だが可能、かなりの脂肪に覆われている。腰椎部及び尾の付け根にはっきりと脂肪沈着がある。
腰のくびれはほとんどまたは全くない。腹部ひだが存在することもある。
8→過剰な脂肪に覆われ肋骨は触知できないか、または触知にかなりの力を要する。
腰椎部及び尾の付け根にかなりの脂肪沈着がある。腰のくびれがない。腹部ひだがない。
腹部がかなり膨張している場合がある。
9→胸部、脊椎及び尾の付け根に大量の脂肪沈着がある。腰のくびれより腹部ひだはない。
首と四肢に脂肪沈着がある。腹部の膨張が明らかである。
●減量方法(運動で体重を減らすのは大変なので、カロリーを減らす。)
・消費カロリーを増やす方法
運動療法(あまり勧められない方法)
散歩・遊び・食事時の活動量を増やす
↓
活動量を増やすことで生じるエネルギー消費は少ない。体重過多の状態で運動することで関節に負担がかかる。
↓
この方法での減量は困難
※筋肉を維持し、基礎代謝を高く維持するためにはもちろん適度な運動は重要!
・摂取カロリーを減らす方法
①絶食による減量
②通常の食事による減量
③減量用の療法食による減量
①絶食(やってはいけない方法)
・脂肪が落ちるのではなく筋肉が落ちる
・カロリーを減少させた食事による減量に比較すると体タンパク質の損失量は2.8~5倍
・猫では肝リピドーシスになる
↓
非常に危険!(リバウンドもしやすい)
②通常の食事による減量(給餌量を減らしすぎることで栄養素不足の問題がでる方法)
給餌量を減らしすぎると栄養不足の可能性あり!
!減量時の食事管理のポイント
カロリー摂取量を減少させたいが、必要な栄養素はすべて与える。
特別な食事が必要になる。)
③減量用の療法食(おすすめな方法)
摂取カロリーを制限しても適正な量の栄養素を摂取できる食事
・減量サポート(減量と肥満に伴う間接疾患に対応)
※ダイエットフードだからと言い多く与えていると肥満の原因となるので注意が必要。
L-カルニチン:脂肪代謝促進
高タンパク率:除脂肪体重の維持
(除脂肪体重→体脂肪をの除いた筋肉、内臓器官、骨など、 生命維持に欠かせない部分のこと)
関節保護+スキンコート:コンドロイチン&グルコサミン
ビタミンA+必須脂肪酸+銅・亜鉛
使い分け→給与量を守れる、糞便量が気になる方に最適。
・満腹感サポート(減量と肥満に伴う間接疾患に対応し減量が必要な糖尿病の子に)
※食物繊維が豊富に入っているため満腹感を維持してくれる。また、食物繊維により便は硬めになる。
高タンパク質+高食物繊維→満腹感の維持
L-カルニチン:脂肪代謝促進
高タンパク率:除脂肪体重の維持
関節保護+スキンコート:コンドロイチン&グルコサミン
ビタミンA+必須脂肪酸+銅・亜鉛
使い分け→見た目の給餌量がやや多めなので、たくさんあげたい方(フードを多く食べさせてしまう方)に最適。
・満腹感サポートスペシャル(減量と肥満に伴う間接疾患に対応し減量が必要な糖尿病の子に)
基本的なコンセプトは満腹感サポートと同じ。特に小型犬に向けて開発された。
(高タンパク、低脂肪、高食物繊維、低カロリーの設計は変えず食物繊維の配合を小型犬向きに配慮し開発。)
●減量プログラム
脂肪組織はカロリーを必要としないため、必要なカロリーよりも少なく給与することで減量することができる。
フード裏の給与表はあくまでも目安のため1週間に1~3%減量できるように調整していく。
(理想体重の給与量を与えることが重要。)
→急激にカロリーを減らしすぎると筋肉が落ちる。体に負担をかけず根気よく続けていくことが重要。
!リバウンドをしないために
減量後の維持量は太ったことのない子の維持量よりもはるかに低い。
リバウンドさせないためにはカロリー制限を続ける必要がある。
・減量修了直後~1ヶ月後
-満腹感サポート(減量サポート)を減量中の給与量+10%与える
-1週間ごとに体重をチェックし給与量を調整
・1ヶ月後~3か月後
-2週間ごとに体重チェックし給与量を調整
・それ以降
-体重が安定すればその給与量を維持
-まだ体重が安定しなければ6ヶ月後まで1ヶ月に1回以上体重をチェックし給与量を調整
減量後も減量用フードを継続しリバウンドしないように調整していくことがおすすめ。
●肥満予防
肥満は万病のもとであり、予防がなにより大切。
・カロリー摂取を抑える…食事の量を加減する・フードを変える
・適度な運動をさせる
・成長期の注意点
肥満と肥満細胞
肥満は二次生肥満(症候性肥満)と単純性肥満(原発性肥満)と大別できる。
二次性肥満とは特別な遺伝性疾患に伴う肥満やなんらかの内分泌異常によって引き起こされる1肥満の事である。
症候性以外の肥満を単純性肥満と言い、これは単純にエネルギーの過剰摂取が原因である。
単純性肥満にはタイプとして脂肪細胞のサイズだけが大きくなる細胞性肥満と、脂肪細胞のサイズに加え
数も増加する細胞増殖性肥満とがある。
一般的に成熟後の動物に生じる肥満の多くは細胞肥大であるが、成長期の動物は細胞増殖性肥満が生じやすい。
動物はいったん増加した体細胞の数を減らすことはできないため、成長期の過程でフードやおやつなどを与えすぎ
ないようにすることも大切である。
この時期におすすめなのがベッツプランスキンケアプラス(ジュニア)
皮膚や免疫力もケアし、消化能力にも長けている。(消化性の高い原材料&腸内環境の改善)
また、便の臭いを軽減する。
・避妊・去勢
避妊手術や去勢手術後は肥満になりやすくなります。
手術前と同じフードを続ける場合には食事量を減らさないと太ってしまう可能性があります。
この時期におすすめなのがベッツプランニュータードケア(犬)・メールケア・フィーメールケア(猫)
カロリー制限をする前提の食事。
高タンパク質、低炭水化物、低カロリー、L-カルニチン、下部尿路への配慮がされている。
AHT:塚田