先日、ロイヤルカナン主催の院内セミナーpart4が開催されました。
今回は消化器疾患の食事管理について下記にまとめます。
消化器疾患に対する食事管理
便は水分・食事の残渣・細菌の死骸・腸壁細胞の死骸であり、便の60%は水分でできています。
(便の比率…水分60%・腸壁細胞の死骸20%・細菌の死骸15%・食物残渣5%)
●下痢とは…
病名ではなく症状を表す言葉で、糞便中の水分が増加した状態の事です。
正常な便の水分は約60~70%ですが、下痢は80%以上となります。
小腸について
上記の便の内容物に腸壁細胞の死骸とありますが、この腸壁細胞の寿命は5日と言われています。
小腸は血液からエネルギーを摂取できないため、流れてくる栄養を絨毛と呼ばれる突起で捕まえます。
この絨毛は腸内に3000万本、微絨毛は300兆本あり小腸の表面積は120畳にもなる。
腸は小型犬の方が長く、食物繊維を多く摂取すると便がパサパサになることもある。
小腸のはたらき
・栄養素の消化と吸収
・水分の吸収
吸収というのは、食べ物という大きな物質を分解して体内に取り込むことができるように小さな分子にすること。
(咀嚼により物理的消化をし、腸内の消化酵素によってさらに分解していく。)
小腸に流れてきた栄養素は腸粘膜に吸収されます。その際に腸管内と腸粘膜で濃度差ができるため、
浸透圧によって水分も腸粘膜に移動し吸収されます。
しかし、小腸にトラブルがあり栄養素を吸収できないと腸粘膜に栄養素が吸収されないため濃度は腸管内の
方が高くなります。結果腸管内の浸透圧が高まり水分も腸管内に移動します。これが下痢の原因の一つです。
小腸性下痢の特徴
・大量の糞便
・水分の約80%は小腸に吸収される
・体重減少を起こしやすい
・排便回数はそれほど多くならない
食事管理
消化器サポート(低脂肪)
→高消化性・低食物繊維・低脂肪・腸内細菌バランス(人にとっておかゆのようなお腹にやさしいフード)
下痢の他に膵炎・リンパ拡張症・小腸細菌過増殖(SIBO)・脂肪便・胆のう疾患にも対応している。
大腸のはたらき
・ミネラルの吸収
・水分の吸収
・糞便の貯蔵
大腸性下痢の特徴
・糞便量はあまり変化しない
・体重減少を起こすことはまれ
・排便回数が多くなる(しぶりも見られる。)
・粘膜便がみられることが多い(鮮血が出る場合もある。)
食事管理
消化器サポート(高繊維)
→食物繊維(不溶性・可溶性)・EPA,DHA・腸内細菌バランス
大腸性の下痢・ストレス関連性結腸炎・便秘
●不溶性繊維で食事のかさを増やし腸内の水分を取り込む。また、便量を増加させる。
●可溶性繊維で有用細菌の増加を促し、大腸粘膜の栄養源短鎖脂肪酸を産生。
腸内細菌バランスを保つためにビートパルプ・マンノオリゴ糖・フラクトオリゴ糖を含んでいる。
ビートパルプ…コレステロールを下げる
マンノオリゴ糖…感染を防ぎ、悪玉菌が増えないようにする
フラクトオリゴ糖…悪玉菌が増やさず善玉菌を増やす
その他の消化器系フード
消化器サポート(高栄養)
→高エネルギー・高消化性・腸内細菌バランス
子犬の下痢・手術回復期(腸の手術など)・膵外分泌不全(EPI)にも対応している。
体重減少が見られる場合・食事量を少なくしたい場合にも良い。
アミノペプチドフォーミュラ
→アミノ酸及びオリゴペプチド・食物アレルゲン排除
炎症性腸疾患(IBD)・食物アレルギー・リンパプラズマ腸炎
食物アレルギー疑いの場合に使用される。低分子プロテインや
セレクトプロテイン、セレクトスキンケアに移行できる場合もある。
AHT:塚田