先日、ロイヤルカナン主催の院内セミナーPart2が行われました。
今回は、尿トラブルに対しての食事管理について以下にまとめます。
LUTD(下部尿路疾患)に対する食事管理
①下部尿路って…?
上部尿路は腎臓と尿管、下部尿路は膀胱と尿道の事を言います。
犬の下部尿路疾患の統計調査によると40%が膀胱炎、24%が尿失禁、18%が尿石症、8%がその他となっています。
膀胱炎はメスに多く、尿失禁は避妊手術後のメスに見られる事があります。
また、膀胱炎や尿石症は感染性であることが多いと言われています。
猫の下部尿路疾患の統計調査によると57%が特発性膀胱炎、22%が尿石症、10%が尿道栓子、8%が尿路感染症、
3%が不明となっています。
特発性膀胱炎の原因は明確には判明してはいませんが、ストレスや水を飲む量が少ないことが一つではないかと
言われています。
症状は…頻尿、血尿、排尿痛などが挙げられます。
この特発性膀胱炎は濃い尿が膀胱を刺激し、再発率が高く繰り返すと慢性膀胱炎や尿石症の原因にもなり得ます。
治療は…?
・膀胱を保護する(EPA,DHAが良いとされる。魚に多く含まれ、炎症を軽減し膀胱壁を刺激から守る。)
・ストレスを最小限にする(トイレを綺麗に保ち、多頭飼いであれば頭数分のトイレを出来るだけ設置する。
また、キャットタワーなど上下に運動できるような場所があるだけでもストレスを和らげることができる。)
・尿量を増やす(療法食を使用し、尿を薄めて刺激を減らす。食事中のタンパク量・ナトリウム量を調節し飲水量を増加させる。
消化率の向上を図り水分吸収率を向上させる。)
②尿石症
犬猫共に結石はストルバイトとシュウ酸カルシウムが主に検出されます。
ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)
ストルバイト結晶は尿がアルカリ性に傾くと発生しやすく、酸性尿中でよく溶けます。
→・尿酸性化剤を与える(骨が脆くなることがあり、長期使用には適さない。)
・食物中の成分を調節する(適切なフードで管理するとアシドーシスになりにくい。)
犬のストルバイト結石症の原因70%が尿路感染症を伴っていると言われています。
(そのため、抗菌剤の使用やタンパク質を制限した食事が好ましい。)
じゃこ、煮干し、のり、ミネラルウォーター(硬水)を多く摂取していると尿pHが高くなります。
またマグネシウムを多く含む食事を取ることで、ストルバイトが形成されやすくなります。
気温の低下や肥満によりあまり運動をしないと水分を摂取する量が減り、尿量が減少します。
このため、尿の濃度が高くなったり、膀胱に尿が溜まるのに時間がかかり尿結石のリスクが増大します。
(食事中に含まれるタンパク質や塩類が多いと水分摂取量が増えます。)
消化率の低い食事を食べている場合、糞便の量が増加し、それに伴い糞便中の水分が増え尿量が減少します。
ストルバイト結石の管理のポイント
・尿を弱酸性にする…猫:pH6.0~6.5
犬:pH5.5~6.0
・マグネシウム摂取量を控える
・尿量を増やす(飲水量を増やす・消化率の高い食事にする)
・抗菌剤を投与する(結石消失+3週間)(犬)
・タンパク質を制限する(犬)
シュウ酸カルシウム(カルシウムオキサレート)
シュウ酸カルシウムは溶かすことができないため、外科的に除去するしかありません。
マグネシウムを制限しすぎたり、尿pHを下げすぎるとカルシウムの尿中排泄量が増えシュウ酸カルシウムのリスクが高くなります。
マグネシウムを制限しすぎず、尿pHを下げすぎず、尿量を増やすことがシュウ酸カルシウム形成のリスクを下げることに繋がります
③尿石症についてのまとめ
尿結石は予防が大切です!環境とフードを見直してみましょう!
特別に尿結石を考慮した食事だけを与える
!おやつには十分注意
!市販のフードでは限界がある
太らせないように注意する
!食事を与えすぎない
!太りにくい食事を与える
!ストレスを解消
尿を我慢させない
!トイレを清潔にする
!外でしかしない子はお散歩を出来るだけこまめに
④尿石症の食事(ロイヤルカナン製品での管理)
尿トラブルの際に処方されるロイヤルカナンのフードでよく耳にするのが「pHコントロール」かと思います。
pHコントロールも様々な種類がありますので、簡単にですが下記にまとめます。
pHコントロールシリーズの特徴
ーストルバイトを予防可能
ーストルバイトを溶解可能
ーシュウ酸カルシウムを予防可能
ー長期間の給与が可能
ー特発性膀胱炎に適応(猫のみ)
尿を結石(結晶)が溶けやすい(出来にくい)状態にすることができ、
水を沢山飲み尿をすることによって、膀胱の中を洗い流します。
猫用 pHコントロール
・pHコントロール ウェット
ドライ製品よりも高性能(特にシュウ酸カルシウム)、特発性膀胱炎には最適。
→猫はもともと、あまり水を飲まないため尿が濃くなり結石ができやすくなります。
また、ウェットの方が水分を多く含んでいるため結石ができにくいとされます。
・pHコントロール0
ドライ製品中で、尿比重が最も低くなり、ストルバイトの溶解能力・シュウ酸カルシウムの予防能力も最も高い。
特発性膀胱炎にも適している。
→ドライフードの中で最も性能が高く、長期間の使用も問題ありません。
・pHコントロール1
3才までのオス、7才までのメスにおすすめ
→この年齢の猫には、ストルバイトができやすい傾向にあります。
このフードはシュウ酸カルシウムにも対応していますが、ストルバイトがよりできにくくなるように作られています。
・pHコントロール2
3才過ぎのオス、7才過ぎのメスにおすすめ
→この年齢の猫にはシュウ酸カルシウムができやすい傾向にあります。
pHコントロール1同様2種類の結石に対応していますが、シュウ酸カルシウムがよりできにくくなるように作られています。
・pHコントロールライト
体重が気になる子におすすめ(肥満傾向にあると結石ができるリスクが高くなります)
→カロリー10%オフ、高タンパク質・低脂肪・高食物繊維で性能はpHコントロール1・2と比べても遜色はなく
おなかが空きにくいように作られています。
・pHコントロール オルファクトリー(新製品)
下部尿路疾患(結石)に配慮され、嗜好性も高い。また、肥満リスクの高い猫の体重管理にも配慮し、
低カロリーに作られています。
pHコントロール0に次いで溶解能力・予防能力が高い。
犬用 pHコントロール
・pHコントロール(缶・ウェットパウチ)
ドライタイプよりシュウ酸カルシウムに効果的であり、低カロリー・高い嗜好性です。
→ウェットタイプの方がしっかりと水分を取らせることができるため、結石ができにくくなります。
・pHコントロール(ドライ)
細菌感染を考慮しタンパク質を制限。
→ストルバイトは細菌感染が原因でできることが多い結石のため。
・低分子プロテイン+pHコントロール
アレルギーと下部尿路疾患の子におすすめ
→加水分解大豆タンパク&ライスを使用しており、アレルギーと結石にお悩みの子に作られ
お腹が弱い子にも最適です。また、小さめの粒で小型犬でも食べやすいサイズになっています。
・pHコントロールスペシャル
主に小型犬におすすめ
→小粒で高嗜好で、歯石が付きにくくなるようポリリン酸ナトリウムを配合しています。
・pHコントロールライト
カロリー12%オフ、高タンパク、高食物繊維なのでお腹が空きにくいように作られています。
AHT:塚田