ロイヤルカナン主催の院内セミナーを行いました。
内容は食事療法食についてです。
《ライフステージに合わせたバランスの取れた食事~動物栄養学の基礎》
①栄養素の種類
5大栄養素とは…タンパク質・炭水化物・脂肪・ミネラル・ビタミン(+水で6大栄養素となる)
・これらのバランスが重要である。
・人間にとって完璧な栄養バランスがとれた食事を犬や猫に与えても、まったくバランスが偏ってしまう。
・犬と猫では必要な栄養が異なり、猫はタウリン(アミノ酸)・アラキドン酸(脂肪酸)・ビタミンA(脂溶性ビタミン)
を食事から摂取しなければならない。
②犬・猫にあげてはいけないもの
・ネギ類…玉ねぎ、長ネギなどのネギ類には血液中の赤血球を壊してしまう物質が含まれていて、貧血を起こしたり
赤い尿をすることがあります。(ニンニク・ニラにも同じ物質が含まれてるので注意してください。)
・お肉ばかりの食事…肉はリンとカルシウムのバランスが極端に悪いため、カルシウム不足になってしまいます。
リンとカルシウムのバランスは1:1が理想ですが、肉では20:1になってしまいます。
(ペットフードには充分な量のカルシウムが含まれており、カルシウム剤などを追加で与えると逆にカルシウムの
過剰摂取となり、かえって体に良くありません。)
・チョコレート・ココア…中毒(テオブロミン)を引き起こす物質が含まれていて、下痢・嘔吐・突然死を起こすことがあります。
(ダックスフンドで250g、コッカースパニエルで300gのチョコレートを食べて死んでしまった例があります。)
・牛乳…牛乳に含まれる糖分(乳糖)をうまく消化できない子の場合、下痢を起こしてしまいます。
(犬猫のおよそ2~3割が乳糖不耐性と言われています。)
・ブドウ・レーズン…成分は特定されていませんが、有害性が認められています。嘔吐・下痢・腹痛が起こり、数日後に
腎不全を引き起こすことがあります。(犬に関しては腎不全から死亡するケースも報告されています。猫では不明 です。)
・キシリトール…ガムなどに含まれる甘味料で、人では吸収されませんが、犬においては吸収されてしまうため、
急激な血糖値の低下を招き低血糖症状を引き起こします。
(小型犬の場合、数枚のキシリトールガムで致命的な症状を呈する可能性があります。猫では報告がありません。)
※アボカドも沢山の量を食べると同じような症状を引き起こすことがあります。
③犬の習性…祖先はオオカミで、何事もリーダーのもとで行動していたため、リーダー以外のオオカミたちは食事の時も
残り物を奪い合って生きてきた経緯から、あげたらあげた分だけ食べる習性がある。
・肥満になりやすい犬種として…ダックス・パグ・ビーグル・柴・コーギー・フレンチブルドッグ・コッカースパニエル・
キャバリア・シェルティー・ゴールデンレトリバー・ラブラドールレトリバー…など。
(避妊雌の60%は肥満というデータも)
・ボディーコンディションスコア(BCS)
1痩せすぎ (最適体重より20%以上少ない) 明らかに肋骨、背骨、骨盤骨が見える。明らかな筋肉量の減少。
胸まわりに触知できる脂肪がない。
2痩せている(最適体重より10~20%少ない) 肋骨、椎骨の尖り、骨盤骨が見える。ウエストが明らか。
胸まわりに触知できる脂肪がない。
3理想的 (最適体重内) 肋骨、背骨は見えないが、はっきりと触知できる。ウエストが明らか。
胸まわりに薄い脂肪が触知できる。
4太っている(最適体重より10%以上多い) 肋骨、背骨の触知が困難。ウエストがない。背骨とお尻周りへの
脂肪沈着が明らか。
5太り過ぎ (最適体重より40%以上多い) 胸部、背骨、お尻まわりにおける過度の脂肪沈着。明確な腹囲の拡大。
※最近の評価は9段階に分かれているものもある。
・肥満になると、循環器障害の発生率が自然発生率に対しておよそ3.3倍、関節・運動器官の障害がおよそ1.7倍に
上昇する。
その他皮膚疾患、繁殖障害、がん、糖尿病、免疫機能の低下や外科手術の危険性の増大などがあります。
・成長期の体重管理…●子犬の時に太る →脂肪細胞の数が増加する。
●成犬になってから太る→脂肪細胞のサイズが拡大する。
※生後3歳まで自由採食にして育てた子と、幼児期からカロリー調整を行った子に関しては、後者の方が2年長生きした
というデータがあります。
④ペットフードのメリット
●必要カロリーが摂取できれば、各栄養素が過不足なく摂取できる。
●適切なハンドメイド食の継続は困難な時がある。
●胃腸の状態が毎日チェックできる。
・ペットフードの種類
●総合栄養食 …・各ライフステージに必要とする栄養素をすべて含む。
・フードと新鮮な水を与えていれば、特にほかの栄養素を補充する必要はない。
・『ペットフード公正取引協議会』が承認する分析試験、給与試験を行わなければならない。
●間食 … おやつ・スナック
●その他の目的食…・副食・おかずタイプ(嗜好性増進等を目的) 『一般食(おかずタイプ)』などど表記。
・栄養補助食(特定の栄養分の調節などを目的)『栄養補完食』・『サプリメント』などど表記。
・療法食(食事療法に使用することを目的) 『食事療法食』・『特別療法食』などど表記。
・ペットフードの原材料
消化・吸収されれば栄養学的価値は同じなので、原材料の種類よりも必要な栄養素がきちんと取り込まれることが重要
です。
・ヘルスニュートリション
犬や猫に向き合うと、年齢、品種、サイズ、ライフステージ、ライフスタイル、健康状態など、個々の犬と猫はそれぞれに異なる特徴を
持っているため、必要な栄養バランスも一頭ずつ異なることがわかります。個々の犬と猫で異なる栄養要求に応えるための50種類
あまりの栄養素の最適なバランス。それを考慮して日々開発することの総称を『ヘルスニュートリション』と呼んでいます。
・よいフードとは?
●消化性の高いフード…高消化性のタンパク質を使用している。糞便が少なくなる。
●栄養のバランスがとれているフード…各栄養素の量だけでなく質も重要。毛ヅヤがよくなる。
⑤皮膚…・健康な皮膚はセラミドや角化細胞がバリア機能を発揮し、細菌や真菌から守ってくれます。
・健康でない皮膚ではセラミドや角化細胞が壊れてしまっているので、細菌や真菌が入りやすくなってしまいます。
・皮膚は3週間に1回生まれ変わります。
・皮膚は体重の20%を占めています。
・摂取した栄養素の30%が皮膚に利用されます。
※よって正しい食事をしないと健康な皮膚をつくることはできません。
⑥ペットフードの選び方
●それぞれのライフステージでの栄養要求を満たす食事を与える。
●高消化性の原材料を使用した食事を与える。
●ペットは個々によって違うことを忘れないようにする。
まとめ
●犬・猫・人では栄養素の種類は同じであるが、それぞれに必要な栄養バランスは異なるので、それぞれの特性をよく知る
必要がある。
●健康な皮膚には従来バリア機能が備わっており、それ維持するためには正しい食事が不可欠である。
●成犬の肥満では脂肪細胞のサイズが拡大するが、成長期の肥満では脂肪細胞の数が増えるので、成長期に肥満にさせない
ことが重要である。
●良いフードとは消化性が高く、高品質で栄養のバランスがとれたフードである。
●人が食べるものの中には、犬や猫にとって毒性のあるものが存在するので、特定のフード以外はなるべく与えない方が
よい。
●ペットフードにとって酸化が一番のダメージなので、大袋の場合はタッパーやジップロックなど小分けにして保存するのも
おすすめである。(空気に触れないようにする)
●食事を通じて健康を維持してあげることは、真の愛情にもつながる。
AHT:竹内