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DVMsどうぶつ医療センター横浜 動物看護セミナー2014 

 今年の1月に外部で行われたセミナーに参加してきました。

そこで勉強してきた眼科の看護学と入院管理についてを以下にまとめます。

 

 眼科の看護学

 

1 病気の予防・早期発見のアドバイス(眼(水晶体)が白い場合に考えられること)

 ・白内障

   白内障とは眼の水晶体が白または灰白色に混濁した状態。水晶体の混濁は斑点の程度から全面を覆う白濁まで様々で、

   初発・未熟・成熟・過熱白内障と四段階からなる。

   若齢での白内障ほど進行が速く、眼内で炎症を引き起こし痛みが生じることもある。

   ぶどう膜炎や緑内障の合併症を引き起こす可能性がある

 

   原因は外傷性、代謝性、中毒性、アレルギー性などがあげられるが、犬の場合先天性であることが多く手術をうける

   年齢は5歳前後が多い。また、犬種別でみるとトイ・プードル、アメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリアに

   多くみられる。

 

 ・核硬化症

   水晶体の繊維の増殖により古い繊維が圧縮された状態。(人で言うと老眼。)

   7歳より高齢のほとんどの犬に認められるが視覚障害はほとんどなく、ぶどう膜炎も続発しないため治療の必要性は

   あまりないとされる。

 

2 眼が見えないことへのアドバイス

  ・白内障による失明について

    白内障による失明は内科治療では改善しないため、外科治療をするのか相談が必要。

  ・生活環境の整備

    家具など張り出している箇所や先端が尖ったものがないか、ぶつかった際にケガなどしないよう普段生活している

    環境を動物の目線で考え整える。また、家具の配置やお散歩コースなど憶えていることが多いためあまり変えない

    ようにすることも大切。

  ・他の動物との接し方

    眼が見えないと不安や急な物事の変化についていけず不安や恐怖心などから攻撃的になることもあるため、臭いをか

    がせるなど他の存在を教えてから近づけるなどの工夫も必要。

 

3 点眼薬・点眼方法の指導

  ・点眼の成分

    点眼薬=主成分+賦形剤

    主成分…目的とする点眼薬としての薬効を果たす成分。

    賦形剤…pH変動の防止や調整など主成分の安定化や安全性をはかり、点眼薬を涙液の生理的な状態に近づける。

        添加剤のこと。

        開封後の微生物汚染を防止するために保存剤(防腐剤)が入っているものが多いが、保存剤は角膜に負担を

        かける恐れもある。

        (使い切りタイプの点眼薬など、保存剤が入っていないタイプのものもあるが種類は少ない。)

 

  ・眼剤の種類

    眼軟膏剤点眼剤の二つに分けられ、点眼剤は水性・非水性・懸濁性・乳濁性の四種類に分類される。

 

  ・点眼方法

   (点眼前

     手をよく洗い、薬剤の間違いがないか確認する。

     懸濁性点眼など、振る必要のあるものはそれに従う。

     動物の場合、冷蔵保存のものをすぐに点眼されるのが嫌いな子が多いので少し手で温めてから点眼すると良い。

 

   (点眼時

     点眼液の汚染を防ぐために先端を手で触れたり先端が睫毛や被毛、皮膚などに触れないようにする。

     眼軟膏の場合、指の腹に薬剤をのせて行ってもよい。

 

   (点眼後

     可能であれば目頭の辺りをしばらく圧迫する。圧迫することで点眼液の排出を抑え、全身的に吸収されるのを

     減らすことができる。

     眼の周りに溢れた点眼液も適宜拭き取り、眼瞼炎を予防する。

     複数の点眼薬がある場合はそれぞれ数分程間隔をあける。

 

   点眼順のルール

    1より効果を期待する点眼薬を後にする。

    2水溶性より懸濁性、粘ちょう性点眼を後にする。

    3点眼剤より眼軟膏を後にする。

 

   ・点眼薬使用上の注意

    点眼薬と他の薬(点耳薬、外用薬など)との間違い。

    点眼薬の種類の間違い。(キャップや袋の色で覚えている人も少なくないため)

    左右や順序の間違い。

  

   ・点眼薬についてのまとめ

    点眼薬の特徴を理解する…主成分の他に賦形剤も含まれており、副作用にも注意が必要であること。

    正しい点眼方法…点眼瓶が眼球などに触れないよう衛生的に行うこと。

     

入院管理について

 

 1 入院管理において必要なこと

   ・入院動物のケア(状態の把握と個々の管理プラン)

   ・入院室の管理(環境の整備や消毒、感染症対策)

    くしゃみや咳などをしている場合には感染症も視野に入れて対応する(隔離室に移すなど)。

   ・飼い主の不安除去(入院中の状態など看護記録を伝える)

 

 2 食餌管理

   ・給餌量や飲水量は正確に把握する(何をどれだけ食べたのか?接種カロリーはどれくらいか?など)

   ・常に新鮮な食餌が与えられるような工夫

   ・嗜好性を良くする工夫(温めて香りをつよめるなど)

   ・給餌の介助

 

 3 投薬

   投薬後は、30分~1時間程吐き出していないか確認する。

   ・食餌に混ぜる場合…食欲のある子に対して行い、飲み込むまで目を離さない。

             また、粉薬の場合は少量の水や缶詰に混ぜて確実に投薬する。

   ・直接投薬する場合…ハンドリングに慣れた人が行い、投薬した後も薬を吐き出していないかの確認は必ず行う。

         ・外用薬の場合…投薬部位を正確に把握する。また、衛生的に行い、適切な温度で保管する。

 
 4 輸液管理 
   ・輸液の投薬内容、投薬速度の確認
   ・手術内容や病態の把握
   ・栄養状態に合わせた管理確認
   ・留置、ライン、スタンドの衛生管理
   ・逆流、漏れや浮腫の有無
   ・基礎疾患の有無(心臓疾患や腎臓疾患などの有無確認。)
 
 5 排泄物の管理
   ・排便、排尿の回数、1回の排泄量、性状の確認
     入院中の動物の排便、排尿回数は精神状態や健康状態によって変わるため個体差が大きい。
     通常、排便の場合は1日1~2回(ご飯を食べない子や緊張しやすい子などは2~3日に1回のこともある)、
     排尿ならば1日1回以上の確認
     また、尿が出ていない場合は、膀胱炎発症につながる場合や、時には尿道閉塞の可能性なども考える必要がある。
     
 6 特殊な入院管理
   ①幼齢動物の管理
    ・感染症対策(ワクチン接種の確認)
     -免疫力があまりないため他の子との接触を避け、管理側も消毒を必ず行う。

     感染症の場合は隔離室にて管理対応する。

    ・栄養管理(良質なタンパクや脂肪を多く含む食餌、食餌回数の増加)
     -子猫は脱水や低血糖になりやすいため、食餌はしっかりと摂らせるようにする。自ら食べない場合は
      強制給餌や経鼻カテーテルを用いる。
    ・温度や湿度、体温管理の徹底(ICU管理など)
     -ICU室で管理を行っている場合でも突発的な停電事故などによりゲージ室内の温度湿度の上昇がおこり熱中症に
      なる恐れもあるので稼働状況の確認は必要。
    ・いたずら、誤食に注意
    
   ②老齢動物の管理
    ・基礎疾患の把握と治療
     -過去の病歴も確認。
    ・栄養管理、給餌の介助
    ・排泄、歩行の介助
    ・褥瘡(床ずれ)の予防、体位変換
     -肩甲骨、腰、膝、肘に褥瘡ができやすい。予防のために軟らかく滑りにくい素材のマットなどを使用。
     体位変換は、2~4時間に1回行うようにする。
   
   ③疾患別管理
    (整形外科入院動物のケア)
    ・患肢の包帯、使用状態の観察
    ・ケージレスト
    ・転倒防止
    ・リハビリ
    ・排泄の管理
    ・体側肢のケア
    
    (眼科入院動物のケア)
    ・眼脂の性状と量、眼瞼痙攣、充血、角膜浮腫、視覚反応の確認
    ・眼内手術後は絶対安静
    ・頭部の取り扱い
       
 7 退院前準備
   ・処方薬の作成
   ・預かり物のチェック
   ・その他お渡し物のチェック
 
 8 まとめ
   ・入院管理は飼い主さんから大切な家族を預かる責任のある重要な業務。
   ・動物の状態を正確に把握して看護計画を立てる。
   ・管理のポイントを踏まえ、きめ細やかなケアを行う。
   ・入院環境の整備も重要。
   ・動物と飼い主の両方のストレスを和らげ、安心してもらえるようなケアを心がける。
 
                                                                                                               AHT:塚田