先日、外部で行われた動物看護セミナーに参加してきました。
そこで勉強してきた「臨床検査」の血液塗布沫検査を中心にまとめます。
【血液】
血液とは全身を循環する赤色の液体であり、血清(または血漿)と細胞成分(赤血球・白血球・血小板)に大別され、
白血球は好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球からなります。
血液の赤い色は赤血球中の血色素(ヘモグロビン)によるものであり、酸素に富む動脈血は鮮紅色ですが、酸素に乏し
い静脈血は暗赤色です。
全身の各部位をくまなく循環し重要な機能を行う血液は、成分組成の生化学的な値が健康な状態では一定で、なんらか
の病気などにより体に負担がかかると、値に疾病特有の変動が生じることが多いため検査を行うことにより、全身状態
や病気の進行あるいは回復などを推察できます。
【血液検査】
血液検査では主に機器を用いて行います。
- 自動血球計算機…血液1μℓ(マイクロリットル)中の赤血球・白血球・血小板の数などを測定する。
- 生化学検査用機器…血液に含まれる化学成分の種類と含有量を測定する。
この2種類の検査機器が主に使用されます。
しかし、血球の形状や分布などは機器では正しく確認できない場合があり、血液塗抹標本を作り顕微鏡で観察します。
【血液塗抹標本】
血液塗抹標本とは、血球を肉眼で観るために血液をスライドガラスに塗り付け、染色などの処理を施した標本です。
血液塗抹のポイント
- 血液を塗抹するのは可能な限り採血した直後から1時間以内、また長くても3時間以内。
(時間が経つにつれて赤血球の形は変化し、白血球の場合潰れてしまいます。)
- 染色に使う染色液は、簡易染色液やライト染色液、ギムザ染色液などを使用します。
- 血液塗抹は厚くても薄くてもダメ。
(厚いと血球が凝集し、薄いと血球が壊れてしまう。塗抹した際に蛍光灯など光にかざし、血液が虹色に見える程度
が調度いい。)
- 観察する部分は塗抹の端ではなく中間部分。
(端だと血球が密集してしまい、正確に鑑別することができないため。)
【血小板】
血小板になる細胞(巨核芽球→前巨核球→成熟巨核球)は骨髄で成熟し、血小板になって血管に放出されます。
1つの巨核球からは約2000~5000の血小板ができます。
同じ血小板と言えど、犬は大きさが均一ですが、猫は不均一で赤血球と大きさがあまり変わらないため、自動血球計算
機では正確な値が計れないことがあります。そういった場合は、血液塗抹を用いて概算をします。
概算した際、1000倍率(接眼レンズ倍率×対物レンズ倍率)の顕微鏡で1視野に約10個以上の血小板が見える場合は通
常問題はありませんが、それ以下だと血小板数が少ない可能性があります。さらに1視野に1~2個程度しか見られない
場合は非常に危険と判断されます。
また、持続して血小板が壊されているときや使われているときには巨大血小板が出現することがあります。
この血小板は赤血球の大きさを超え、血小板産生の亢進を示唆しています。
著しい血小板減少が出やすい病気として、ジステンパーウイルス・パルボウイルス、免疫介在性血小板減少症、播種性血
管内凝固(DIC)などがあげられます。
(ジステンパーウイルスとパルボウイルスは若齢の犬(ネコはパルボウイルス)がなりやすい。)
また、血小板が減少することで紫斑(特に腹部・鼠径・首)ができやすくなります。
【赤血球】
赤血球になる細胞(前赤芽球→好塩基性赤芽球→多染性赤芽球→後赤芽球→多染性赤血球)は骨髄で成熟し、脱核して
骨髄から出た後に多染性赤血球→成熟赤血球となります。
正常な赤血球では辺縁が滑らかで真円に近く、細胞質内に構造物はありません。
また、猫ではセントラルペーラーが見えにくい構造になっています。
赤血球のポイント
- 貧血がある場合に再生像が見られるか。
(再生像の有無で再生性貧血か非再生性貧血か判断することができます。)
- 自己凝集像があるか。
(自己凝集像が見られた場合、免疫介在性溶血貧血の可能性があります。)
- 形態異常の赤血球がないか。
・エキノサイト(金平糖状で多くはアーチファクト)
・アカンソサイト(不規則な棘が特徴で、肝疾患・血管肉腫・DICで見られます。)
・標的赤血球(弓の的の様な形状で鉄欠乏性貧血や肝疾患、脂質代謝異常で見られます。)
・菲薄赤血球(セントラルペーラーが拡大し、ヘモグロビンの含有量が低下したときや鉄欠乏性貧血で見られます。)
また、赤血球の膜が破れてしまったり、ちぎれてしまっている状態も形態異常に含まれる場合があります。
- 赤血球内に封入体や寄生体がいないか。
・ジステンパー封入体(ジステンパーウイルスに感染した際に確認できます。)
・ハインツ小体(たまねぎ中毒時や糖尿病時に出現することがあり、ニューメチレンブルーで染色すると青い斑点状
にくっきりと見ることができます。)
・バベシア・ギブソニ(マダニが媒介し貧血状態になり、東北・九州・沖縄で多く、闘犬の間で蔓延しやすい。)
【白血球】
白血球は造血幹細胞から産生され、好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球に分類されます。
鑑別するポイントは大きさ・細胞質の特徴(顆粒の有無や細胞質の色)・核の特徴(核の形やクロマチンの分布)があ
げられます。
- 好中球
大きさは直径12~15μm。
細胞質は通常透明です(細かい好酸性顆粒が見える場合もある)。
核が棒状または、帯状の場合は桿状核好中球と言い、分葉している場合は分葉核好中球と言います。
- 好酸球
大きさは直径13~18μm。
細胞質に赤く大きな顆粒が詰まっていて、犬は顆粒が大きく丸いのに対し猫の顆粒は細長くて細かい。
核は2分葉しているものが多い。
- 好塩基球
大きさは直径13~17μm。
細胞質には紫色の大きな顆粒が点在して、核の上にも顆粒が乗っている。
犬では滅多に見ることができないが、猫の場合、好酸球が増加している際に見られる時があり、顆粒は灰色~ラベ
ンダー色をしています。
- リンパ球
大きさは直径10~15μm。
細胞質は他の白血球に比べると狭く、一部しか見えません。
また、色は薄い水色~青色まで様々あり、細胞質が広いものでは細かい好酸性顆粒が見られる場合があります。
単球とは異なり、細胞質は澄んでいて辺縁が特に青く、核は楕円形核が多い。
大型で細胞質が青く濃染するものを、反応性リンパ球と呼びます。
- 単球
大きさは直径15~20μm。
細胞質は灰色~薄い紫色で、よく観ると細かい好酸性顆粒(アズール顆粒)が存在していて空砲を有しています。
幼若な単球は細胞質の青みが強い。
核の形は馬蹄状核、不整形核、類円形核が特徴だが、猫では楕円形に近い核の単球が多く出現することがあります。
AHT:塚田