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犬・猫のワクチン接種~基礎編~院内ゼミ

先日、院内ゼミを行いました。(2013.6.27)

 

『犬・猫のワクチン接種~基礎編~』について以下に内容をまとめます。

 

【ワクチン接種の目的】

ワクチンの主な目的は個々の免疫力を上げて感染症の発症を抑えること、なおかつ地域集団内の接種率を上げることで

流行させないようにすることである。(個体免疫と集団免疫)

 

【ワクチン接種の必要性】

ワクチン接種を行う個体が多いと地域集団としても免疫力が高くなり、感染症を引き起こす微生物に対して壁の役割を果たす。

この壁があると散発的に感染症の発生があっても流行になりにくい。流行しても狭い地域で収束してくれることが期待できる。

ワクチン接種を受け免疫力がしっかりと備わっている個体達は、免疫力のない個体を間接的に守っていることになる。

免疫力のない個体とは…

①ワクチン接種をしていない個体(健康体)

②ワクチン接種ができない個体(病気などにより)

③ワクチン接種をしているが、免疫力がしっかりと備わらない個体(免疫不全など)

 

免疫力のない個体が感染した場合は発症のリスクが高いことに変わりはなく、また発症してしまった場合は症状もひどく

多くの病原体を地域環境に広げてしまう危険性がある。特に①の個体が発症した場合、当人だけではなく免疫をつけたくても

つけられない②や③の個体にも感染発症のリスクを与えてしまう。

ワクチン接種は個体当人のためであると同時に、周辺地域の集団のためにもなる。

 

【自然免疫と獲得免疫】

 ※免疫は大きく自然免疫獲得免疫に分かれる。

●自然免疫の働き病原体が体内に入ってきたら、食細胞といわれる細胞(マクロファージ、好中球、樹状細胞など)が

         病原体を食べてやっつけてくれる。(消化による免疫)

 

●獲得免疫の働き樹状細胞(病原体が侵入!とヘルパーT細胞に提示)

         →ヘルパーT細胞(抗体を作って!とB細胞に指示)

             →B細胞(抗体を作る)⇒病原体をやっつける。

         

         樹状細胞(病原体が侵入!とヘルパーT細胞に提示)

         →ヘルパーT細胞(感染している細胞をやっつけて!とキラーT細胞に指示)

         →キラーT細胞が感染細胞をやっつける。

         感染が終息すると一部のT細胞とB細胞はメモリーT細胞、メモリーB細胞となり免疫記憶として

         生き残る。

 

さらに…獲得免疫には大きく分けて『能動的と受動的』『自然的と人為的』に分かれる。

●能動免疫→病原体などによりB細胞とT細胞が活性化され、メモリーB細胞およびメモリーT細胞が産出される。

      メモリー細胞は遭遇した特異性のある病原体を記憶しており、再度その病原体が感知されると強い応答を繰り出す。

      自然獲得能動免疫(通常の感染により獲得する免疫がこれにあたる)

      人為的獲得能動免疫(ワクチン接種がこれにあたる)

 

●受動免疫→既存の抗体の形で、ある動物から他の動物へ能動免疫を移動することである。受動免疫は即時的な防御は

      してくれるが、生体自身は免疫としての記憶を生じない。効果としては有効期限付きなので効果が切れると後で

      同じ病原体に感染するリスクをもつ。

      自然獲得受動免疫移行抗体がこれにあたる)

      人為的獲得受動免疫(輸血や血清輸血、血清注射などがこれにあたる)

 

【生ワクチンと不活化ワクチンの違い】

●生ワクチン  →病原性を弱めた(弱毒化した)生きた病原体を用いたもの。液性(抗体など)および細胞性(リンパ球

         など)免疫の両方が誘導される。間にわたって免疫が持続されやすい。

 

●不活化ワクチン→感染性のない死滅した病原体を用いているため、本来の症状がでることはない。液性(抗体など)免疫が

         誘導される。免疫の持続が短いため定期的な追加接種が必要。効果的な免疫を得るためアジュバンド* 

         を添加することが多い。

*アジュバンドとは…抗原性補強剤とも呼ばれ、抗原と一緒に注射することでその抗原性を増強する物質。

         ①抗原を不溶化することで組織に長くとどめ、抗原を徐々に長期間遊離させること。

         ②投与局所に炎症を起こし、マクロファージが集まり抗原が貪食(食作用)されやすくなり抗原提示が

          効果的に行われる。

         ③投与局所や所属するリンパ節のT細胞やB細胞の活性化を強める。

 

【初乳(自然獲得受動免疫)】

●新生子が多くの免疫グロブリン(IgG・IgE)を腸で吸収できるのは限られた時間(生まれてから24~36時間程度)

しかなく、この時間に初乳を摂取することは非常に重要である。また、乳汁中の抗体量が多い時期は24~48時間程度である。

 

移行抗体    :移行抗体は母体から胎子あるいは新生子に世代間を直接的に移行する抗体。移行抗体は野外の感染から

         防御するが同時にワクチン接種も無効化する。(=ワクチンブレイク)

         

ワクチンブレイク移行抗体の能動免疫による阻害などでワクチン接種を行ったのにもかかわらず免疫が十分に

         賦活されないこと。

 

Immunity gap: 感染すると発症してしまう時期にもかかわらず、ワクチン接種をしてもその恩恵を得られない

         危険な感染リスク時期。移行抗体価が徐々に減っていくと発症防御レベルを下回る時がくるが

         しかしながらワクチンブレイクにより、ワクチン接種の免疫応答も得られない時期がImmunity gap

         である。なるべくこの時期を短くする、またはなくしていくことが理想とされる。

 

ブースター効果 :免疫記憶がある状態で同じ抗原の侵入があると抗体価の上昇が早く、抗体価そのものも高くなること。

 

                                               AHT:竹内